脱プラごみ行動をクリエイティブに。新装開店「量り売り」のお店体験記 -企画委員/ライター 腰塚安菜

「重要なのは『脱プラ』ではなく『脱プラごみ化』。」

ラジオを聴いていたら、ゲストとのやりとりで気になるフレーズがあった。この日のゲストは、プラスチック問題に詳しい金子達雄教授(北陸先端科学技術大学院大学)。聞き手は「STEP ONE」ナビゲーターのノイハウス萌菜さんである。

 

ノイハウスさんは、株式会社 斗々屋の広報を務めている。7月31日には、日本初のゼロウェイスト・スーパーマーケット「斗々屋京都本店」がオープン。現代の脱プラアクションと発信の最前線をいく人物だ。ノイハウスさんは、GEFとグリーンピース共催「リユース革命!容器包装で始まるサーキュラー・イノベーション」シンポジウムに続き、7月24日のイベント「映画『The Story of Plastic』から考える環境問題と人権問題」(グリーンピース、ヒューマンライツ・ナウ共催)にも登壇しているので、今回は、その報告と私の「量り売り」のお店体験をお伝えしたいと思う。

「脱プラ」について考える映画「The Story of Plastic」

オンラインイベントでは、事前の予習として映画「The Story of Plastic」の視聴が必須となっていた。

プラスチック問題を描いた映画には、海洋プラスチックの脅威を描いた「プラスチックの海」という作品もあるが、このドキュメンタリーは、1990年代から現在までに取り決められた重要な対策や運動などを時系列に追いながら、プラスチックと生活者の関わりの歴史、先進国と発展途上国の関係性におけるリサイクルの矛盾や食品企業のグリーンウォッシュなどを改めて問うものだ。

本作品は劇場公開を行っておらず、オンラインイベントの形でしか視聴できないものだが、とても貴重な機会になった。

このイベントでノイハウス萌菜さんは、先行して今年東京にオープンした量り売りショップ「nue by totoya(にゅ・ばい・ととや)」での取り組みについて紹介した。

この店では、「地球一個分の暮らし」をミッションに、コミュニティ瓶の提供、リユース専用の返送封筒などを渡すことに加え、コロナ環境下での衛生面の不安を払拭する対策など、量り売り事業をしていく上での工夫をしているという。

また、斗々屋で意識して扱う商品は、基本的に「ゼロ・ウェイスト」「オーガニック」「フェアトレード」の3つのキーワードで、環境・人権配慮がベースにある、とノイハウスさんは語った。

映画の内容や描写にも触れながら、プラスチック問題を扱う団体や大学・インターン学生等の登壇者から ピッチ、パネルディスカッションを展開

中でもノイハウスさんが重要視していたのは、「地域との結びつきは必要不可欠」であること、「量り売りにもいろいろな形(地域性)があっていいのではないか」ということだ。

それを目の当たりしたのが、京都に誕生したごみを出さないスーパー「斗々屋京都本店」である。

グランドオープン初日の「斗々屋京都本店」で思い思いに買い物をする人々。 馴染みのある乾物の量り売りだけでなく、生鮮野菜、液体調味料、発酵食品、お惣菜なども

斗々屋京都本店での買い物

早速、私も体験してみた。

持参の容器を使用し、自分の買った量と値段がプリントされたシールを貼り付けて会計へ。空き瓶などの容器を忘れたらデポジット制のレンタルや店舗おすすめシリコン容器の購入もできる。

商品の側に備え付けられたボタンを押すと、商品情報が秤に送られるという最新のテクノロジーも取り入れられた購入フロー。

初めての体験で不慣れなため「これはどう買ったらいい?」という質問も連発。でも、買い方を丁寧にガイダンスしてくれるスタッフに従い、 鳴門産の塩蔵生わかめ、地元京都の富士酢 醸造元、飯尾醸造の「ピクル酢」 、量り売りのラインナップとしては目新しい大粒の「柿の種」などを買うことができた。

量り売り体験ができたうれしさに加え、それぞれがお値打ち価格で買えるというところも気に入った。

驚いたのは、納豆も量り売りにされていたことだ。

小分けパックと中身の薄いビニールシートの形状ではなく「持参容器で、欲しい分だけ買う」スタイル。粘り気のある商品だけに苦労したというが、「京納豆」などを扱う地元の老舗食品企業の社長と「寒天流し」の型を使うことで試作を繰り返し、実現させたという。

今後は、このゼロ・ウェイスト納豆もお目見えするとのことで、次回、是非味わってみたい。

斗々屋京都本店で量り売り購入し、持ち帰った新鮮食材や調味料は、余すところなく宿で頂いた

「脱プラごみ」アイデア次第で可能性は拡大!

「量り売り」の手法を始め、生活者がプラスチック使用の手段を代替する買い物の場は広がりを見せているが、事業者も生活者もうひと工夫できることがあるとすれば、新しい商品を考案したり、生活上のアイデアを増強させることかもしれない。

冒頭で紹介した「脱プラ」を「脱プラごみ化」する行動へと進ませる上でカギとなるのは、創意工夫(クリエイティビティ)なのではないだろうか。

納豆の量り売りの開発秘話を聞きながら、アイデアさえ出せば、量り売りできる商品はもっと増えるのではないかと感じた。

同時に、いつものスーパーマーケットの売り場で、「これは不要なプラスチック包装なのではないか?」「こうすれば、もっとプラスチックごみを減らせるのではないか」と、消費者の側からアイデアを出していくことも大事だと思う。

皆さんも「論より証拠」、ぜひ一度、近くにある「量り売りのお店」を体験してみてほしい。