セミナー/勉強会 連続講座
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2020年度連続講座報告
理事・岡山 泰士(クリエイトブックス)
グリーンリカバリーの最新動向とカーボンニュートラルへの課題
日本環境ジャーナリストの会では、例年の連続講座をオンラインで開催した。テーマは「グリーンリカバリー」。菅政権がようやく「2050 年温室効果ガス排出量ゼロ」を表明した直後のスタートとなった。その概要をお伝えしたい。
世界で資金は余っているが、判断材料とルールづくりが弱い
EU では1.8 兆ユーロ(224 兆円)を予算化し、少なくとも30%を気候変動対策に充当する。コロナ禍でESG投資がさらに進み、EU 中央銀行によるグリーンボンドやサステナビリティボンドも発行された。日本では、金融面での官民連携はこれからだ。カーボンプライシングを行い、温室効果ガス削減にかかる費用と投資効果との関係が明確になれば、金融が施策実現を後押しするための循環が起こるという吉高さんの言葉に、希望が感じられた。
洋上風力の2050年計画は37GW、ポテンシャルはその10倍以上
サーキュラーエコノミー実践のカギは縦と横の「連携」
ナイキ、イケア、アップル、シーメンス、H&M などの先進企業は、材料、デザイン、デジタル戦略などに積極的にサーキュラーエコノミーを取り入れ、実践している。国内企業でも材料や廃棄物のリサイクルにとどまらず、家電サービスを使用回数比例の課金にすることなどを通じてサーキュラーエコノミーに貢献する例もあるという。
今後は一社ごとのリサイクルにとどまらず、業界内の横連携を進めたり、製造業と静脈産業との縦連携など、自然を基盤とした解決策(Nature-based Solutions)に取り組むことが、生態系保全や防災・減災にもつながるだろう。
「より良い未来に向けた復興」のはじまり
新型コロナウイルスが脅威となったきっかけは、人間の経済活動や気候変動による生態系の破壊などの環境の変化だ。ウイルスの存在がかつてないほどに近くなった人間社会に入り込み、人間に感染した結果であり、人口集中とグローバルな人の移動が感染拡大の要因となった。
その一方で、経済活動の停滞により、二酸化炭素排出の削減や、大気汚染、河川の汚染などが改善した。これは現在の経済、社会が自然の浄化作用を上回って環境に与えている負荷であり、「自然からの警告」といえる。
非効率な石炭火力のフェードアウトも含め、ようやく動き出した日本のグリーン政策。真の「より良い未来に向けた復興」を実現するためには、レジリエンスの強化、感染症・災害・気候変動などのリスク低減、そして大きな社会システムの転換といったことが必要だ。何がより良い未来であり、「ありたい未来」なのか。明確なビジョンが求められている。