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JFEJ連続講座2019(10/9-11/6) ジャーナリストが伝える環境とビジネスの最新動向 ~企業や市民は、リスクとチャンスにどう向き合うべきか~
「Youth環境アクティビストが伝える気候変動アクション」
(環境アクティビスト / Spiral Club 清水イアン、神戸大学 / Fridays For Future Kobe)
今年の連続講座第1回目は、昨今メディアから熱い視線が注がれる、気候行動を起こす若者(ユース)世代の代弁者として、2人の若いアクティビストをお招きした。
はじめに、350.org Japanの立ち上げに貢献、フリーランスで様々なプロジェクトベースで活動し、若者のリーダーシップをとっている清水イアン氏によるスピーチ。
講義当日、ニューヨークから帰国したイアン氏は9月の国連気候行動サミットと重なった渡航中に観てきた中、ずば抜けて個性的だったユニークな環境行動、ごみ拾いダンス集団「Litterrally」を紹介。ニューヨークでは、こうした行動を止める人は警察を含めて一人もおらず、むしろ街ぐるみで感謝、賛同されるという。「『Litterraly』は、環境分野においてイノベーションを支えるエコシステムがしっかりと存在していることを証明する取り組みと感じた」、また「日本では『出る杭は打たれる』。でも気候危機のような事態を解決に導くには、分野で技術、社会、様々な分野で『出る杭』はもっとあるべきだ」とも問題提起した。
他にもニューヨークでは親しくなった環境ジャーナリストの女性の計らいで、雑誌『The
NewYorker』の”プレス“として潜入するなど、貴重な経験をしたイアン氏。その中で目にした生身のグレタさんをメディアが取り囲む様子は「異常」ともいえる光景だったそうだ。
「なぜ彼らが学校を欠席してまで大人の前に立って訴えなければならないのか。行動を起こすユースを『希望』などと形容し、称賛するメディアには違和感。怒りを覚える」。
メディアが伝える同じ事実でも、ニュースで目にする、若者に明るい未来を担ってもらおうと締めくくる文脈とは違う見方で、実際に現地に行き、輪の中に入るという「行動」で示すアクティビストならではの熱い生の言葉で語ってくれた。
その後、今井絵里菜さんによるプレゼンテーション。高校3年生から関心を持って環境経済学を学んできたが、就職活動を終え、大学生活5年目となった今、その時々で連帯してきたユースの「その先」が不透明であることが気がかりと話した。
Climate Action参画への大きなきっかけは、ユースによって設立されたNGO「Climate Youth
Japan」(以下CYJ)入会後に初めて参加したCOP23。その時、国際交渉の外で行われていた会議場外のユースの抗議デモに衝撃を受けたという。デモは日本の石炭火力投資に反対するもので、そこで日本からの参加ユースとして抱いた「恥しさ」の感情を頼りに、今も日本の石炭政策に強い問題意識を持って活動し続けている。3年生の夏からドイツ留学を経験し、帰国後は地元の神戸で、大学に近い場所に建設される石炭火力発電所建設反対に市民が声を挙げていることを知り、若い世代が少ない中で参画している。
最後に、目下の活動の3本柱を紹介。CYJで引き続き共同代表を務めながら、グレタさんの発起に続き都内に住む一人のユースの声で始まった「Fridays For Future」(以下FFF)へも参加。さらに環境省「COOL CHOICE キャンペーン」で、学生主体となった施策「ヤッターマン×再配達防止!」などで、環境行動を若い世代へ伝えるお手伝いをするなど、提言書などで「声を届ける」だけでなく、取り組み化にも積極的なコミットメントを増やしているという。
「以前は政策にユースの声を取り入れてもらえる機会自体が少なかったが、その風潮は少しずつ変わってきている」と今井さん。「(神戸でのストライキに参加して)まだまだ若い人が少ないと感じるシーンもある」と話したが、活動の3本柱「CYJ」「FFF」「神戸石炭・気候変動訴訟」のそれぞれに参画しながら、若い世代として何が出来るかを探り続ける、ひたむきな姿勢に触れた。
発表後は、2人をコーディネートした腰塚安菜(会員)も参加し、ユースのアクティビズムやメディアとの対峙について深堀しながら、会場からの質問を受け、盛会のうちに終了した。
メディアはユース達、アクティビスト達を「群」に捉えがちだが、個々の意見にフォーカスすると多種多様で、「アクション」にも個性があることを再認識させられた。
一人一人の声に耳を傾けることで、今後はユースの行動や気候関連ニュースへの見方も変わっていくかもしれない。
プレゼンを行った今井さんが当日使用の資料をご提供いただきました。
下をクリックするとダウンロードしてご覧いただけます。
「IPCC2つの特別報告書を読み解く」
講師:三枝信子さん(IPCC土地関係特別報告書執筆者/国立環境研究所)、榎本浩之さん(IPCC海洋・雪氷圏特別報告書執筆者/極地研究所)
連続講座2回目では、今年8月と9月に相次いで公表されたIPCCの2つの特別報告書をテーマに、国立環境研究所の三枝信子さんと、極地研究所の榎本浩之さんが講演した。
最初に8月公表のIPCC「土地関係特別報告書」執筆者の三枝さんが、「食料・水・生態系と調和する気候変動対策とは?」と題して講演。産業革命前に比べ、世界の気温は平均ですでに0.87度上昇しているが、陸域では上昇幅が1・53度に達していることを説明した。さらに気候変動による高温、干ばつ、洪水の増加ですでに食糧供給に影響が出ていることを解説。農林畜産業やそれに伴う土地利用変化による温室効果ガスの排出は、人為起源総排出量の23%に相当し、また世界の食糧生産・加工・流通・調理および消費に関連する排出量は、同様に人為起源の21~37%に相当すると説明し、「食品ロスの削減や食習慣の見直しを含む食料システムの低炭素化が必要だ」と身近にできる対策の重要性を強調した。
9月25日に公開されたばかりの「海洋・雪氷圏特別報告書」執筆者の榎本さんは、今から約200年後の2300年ごろまでの温暖化と海面上昇の関係について解説。「温室効果ガスの排出を抑えられれば、海面上昇は1メートルに抑えられるが、適切な対策をとらなければ上昇幅が5・4メートルにもなり得る」などと説明した。さらに気候へのレジリエンス(気候変動の影響による災害に強い、対応能力がある、などの意)や持続可能な開発は、「緊急で野心的な排出削減」に大きく依拠していると強調し、報告書では「教育と気候リテラシーの重要性に初めて焦点を当てた」として、「海洋と雪氷圏の変化は、我々のすべての生活に影響を与える。今こそ行動の時だ」と訴えた。
市民ら40人以上が参加。「海洋熱波」など「研究者でさえ聞いたことがない」という最新の成果が存分に披露されて質疑次ぎ、盛会のうちに終わった。
プレゼンを行った両先生が当日使用の資料をご提供いただきました。
下をクリックするとダウンロードしてご覧いただけます。
→無断転用禁止‗JFEJ講座‗第2回資料‗IPCC土地関係特別報告書について
→無断転用禁止‗JFEJ講座‗第2回資料‗IPCC海洋雪氷圏特別報告書について
「激動の日本の再生可能エネルギー最新事情がわかる」
講師:今西章さん(エネルギージャーナル社編集次長)、廣町公則さん(エネルギージャーナリスト/「ソーラージャーナル」エディトリアルディレクター)
「地域でSDGs・サーキュラーエコノミー」
講師:渡部健さん(めぐりでんき株式会社 代表取締役社長)、松木喬さん(日刊工業新聞記者)
「『ESG』x『投資』が目指すもの」
講師:河口真理子さん 大和総研 研究主幹
「地域循環共生圏」
「水杜の郷」(茨城県つくば市水守1605-2)を環境ジャーナリストと一緒に、視察します
- ◆第1回~第5回(各回定員30名)
- 環境パートナーシッププラザ(GEOC)セミナースペース(フィールドワーク時を除く)
(〒150-0001東京都渋谷区神宮前5-53-70国連大学ビル1F
19:00~20:30(受付18:30~)(※フィールドワークは午前9:30東京駅集合予定)