10月7日、11月10日から12日間にわたって開催されるCOP30を前に、直前勉強会が開催された。講師は環境省気候変動国際交渉室長の平塚二朗さんで、COP30には環境省交渉官として参加される予定である。
当日は、COP開催前に行われる気候関連会合の情報や、COP30の概要・議論のポイントについてご講演いただいた。
平塚さんは、COP30の意義として、トランプ政権下でパリ協定からの離脱を表明したアメリカの動向を踏まえつつ、1.5℃目標の達成に向けて全ての主体が歩みを止めないことの重要性を強調された。特に、多国間の連携を再確認する場となることが期待されているという。

予想される主要論点は以下の三点である。
① 各国の国が決定する貢献(NDC)や隔年透明性報告書(BTR)を踏まえた、さらなる緩和策の議論
② 「UAE-ベレン作業計画」に基づく、適応の進捗を測る指標の策定
③ COP29で決定された気候資金の新規合同数値目標(NCQG)を踏まえた資金支援のあり方
日本の主な主張としては、緩和・適応・気候資金の三つの観点から以下の方針を予定している。・緩和:すべての温室効果ガス・セクターを対象とした総量削減目標の提出と、排出削減の着実な実行を各国に呼びかける。また、パリ協定第6条に基づく二国間クレジット制度(JCM)の有効性を訴える。
・適応:気象災害への防災分野などで日本の技術・知見を共有する。
・気候資金:能力を有するすべての締約国が資金動員に貢献し、民間資金を含む多様な資金源の活用と、脆弱国のアクセス改善を促進する。
また、現地では日本の取組や技術を発信する広報スペース「ジャパンパビリオン」で、セミナーや技術展示、バーチャル展示が実施される予定である。
今回のCOP30ではパリ協定離脱後のアメリカ交渉団が不在となる見込みである一方、その他の主要国がネットゼロへの歩みを止めなければ、多国間主義を維持できるのではないかと平塚さんが述べられていたことは印象的だった。
開催国ブラジルは、「mutirão(ムティラオン)」という「共通の課題に取り組むためにコミュニティが集まる」という精神を掲げ、国やステークホルダーを超えた協働を提唱している。
アメリカ不在の状況だからこそ、各国のリーダーがより一層連帯し、気候変動の解決に向けて前向きな成果を出してくれることを期待しながら、COP30の動向に注目したい。